美空市美空町………の隣にある市、美月市美月町。


「………えぇっと、そしたらこれで全部ですかね?」
「はい。ありがとうございます。お疲れ様でした。」

鹿目あさぎは宅配業者から荷物を受け取ると、ふぅとため息をついた。

「…………お、今年は豊作かな。」

米10sを軽々と担ぎ、あさぎは台所に持って行った。

高校進学をするにつれて、両親にわがままを言って1人暮らしをすることになったあさぎは、
冷蔵庫に貼ってある写真を見た。

「…………魔女かぁ。おばあちゃん、最期まで女王様に会えなかったことを悔やんでいたからねぇ。」

幼少期から多忙だった両親に代わり、自分の面倒を見てくれていた祖母が死んだのは中学卒業の頃。
自分が魔女だと言っていた祖母は、いつか魔女界に行って女王様に謝りたいといつも言っていた。
両親の前では魔法を使わなかったため、2人とも信じてはいなかったが
あさぎだけは祖母が嘘を言っているとは思えなかった。
魔法を使わない理由は、「1人になってしまうことが怖いから」とのことで、
寂しい思いをしていたあさぎの前でだけ、祖母は魔法を使っていた。

祖母は薬剤師の資格を持ち、魔法を使って薬を生成していた。

あさぎも将来は医学関係の仕事に就きたいと思っていたため、祖母から漢方を始めとする薬学について
教わった。

米櫃に米を入れた後、あさぎは身支度を済ませると玄関の扉を開けた。

「さーて、今日はどのあたりを散歩しようかな。」
続く。