23/10/24 00:24 (:FF)
(10/24)ヒカセンは拷問ができない

※Xで見掛けた「あなたのヒカセンは拷問出来る?出来ない?」的な話題を受けて、自機で考えてみた。
※リヒト:自機うさおヒカセン




リヒトは逃げる男に追いすがり引き倒し、体重を掛けて押さえつけた。すると観念したのか、男は呻き声をもらして大人しくなった。
「流石の手腕ね、ありがとう。」
後ろから彼を追ってきたヤ・シュトラが声を掛ける。サンクレッドが何処から持ってきたのか縄を手に、俺が代わろう、と隣にしゃがんだ。
男の拘束を任せて立ち上がると、正面からは先回りしていたエスティニアンが悠々と歩いてきた。
「いい所はお前に持っていかれたな。」
「エスティニアン、貴方もありがとう。あとは彼に事情を聞かなくてはね…。」
仲間と共に追っていた組織だった悪事の、ようやく掴んだ尻尾がこの男だった。
「あとは俺とヤ・シュトラでやっておこう。」
しっかりと縄で縛り上げた容疑者を無理やり立たせたサンクレッドが、気遣いの笑みでリヒトを見やる。
お前は休んでおけ、ということだろう。
「え、いいよ僕も付き合うよ。」
男を背中からどついて歩かせるサンクレッドの後ろにリヒトが続こうとした時、その行く手に割り込んだのはエスティニアンだった。
「心配ならここは俺が任されよう。お前はアルフィノたちと合流して状況の共有だな。」
「……わかったよ、3人に任せた。」
肩を竦めて、仕方なしに踵を返す。
侮られている、とは思わないが、仲間たちはどうにも自分に対して過保護だと思う。


「って感じで、いまはサンクレッド達が対応中ってわけ。」
「なるほどな。」
「ではその間、私は聞き込みを続けておくよ。」
「それ、私も一緒にいくわ。貴方はラハと待機してて!」
軽く手を振ってから街中へと歩いていった双子を見送ると、リヒトは戯れにグ・ラハにのしりと寄り掛かる。
「どーした、なんかあったか。」
「こういう時にサンクレッド達は僕のこと甘やかしすぎじゃない?僕だって力になりたいのにさ。」
こういう時、とは今回の様な"多少の暴力を伴うかもしれない事情聴取"の事だろう、と合点しつつグ・ラハは凭れかかってくるリヒトを押し返した。
「十分力になってるだろ。あんたにしか任せられないことだって沢山あるけど、今回は他に出来るやつがいる。適材適所ってことなんじゃないか?」
グ・ラハの言葉を聞いてもイマイチ納得がいかないのか、リヒトは拗ねたような顔で腕組みしている。
「そうかもしれないけど、仲間にばっかり汚れ仕事させたくないよ。」
「……そんな事いって、あんた本当はこういう時に力ずくで解決するの好きじゃないだろ。」
ギクリ、と動いた肩に今度はグ・ラハが戯れに凭れ掛かる。
「できれば穏便な話し合いでなんとかしたい、あんたがいつもそう思ってることくらい、オレたちはみんな知ってる。」
「そう……。」
ちらりとリヒトの様子を見れば、なんとも複雑そうな顰めっ面で唇を噛んでいた。どんな感情なんだか、と思いつつグ・ラハは相手の脇腹を小突き、からりと笑った。
「そう気に病まずに、みんなやオレにも色んなこと分担して背負わせてくれよ。んで、いざと言う時はあんたを頼らせてくれたらいいさ。」
「……ん、ありがと。」
ふっ、とようやく力の抜けた笑みを見せると、リヒトはグ・ラハにもう一度戯れに寄り掛かる。
「やっぱおじいちゃんの言葉は説得力あるね。」
「うるせー、今はもうオレのがあんたより年下!」
ああ、安心して背中を任せられる仲間たちの、なんと頼もしいことか!

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