<あらすじ>
某都会にそびえ立つ某ビル内にある、プログラミングを主とした某中規模企業の某一室に奴らはいた。キーボードをタイプする音が響く中、女が手を止め辺りをキョロキョロとしだす。隣で資料を作成していた男がそれに気付く。
「おい、お前もう仕事終わったのか?」
「!……え、ええと……い、いえ……その………」
「でも画面消えてるじゃねえか」
「な……なななんでも……なんでもないです…」
「なんでもないなら仕事続けろよ」
(こいつと会話するのは入社して初めてだな…)部署内でも滅法話さないことで有名だった人物との会話を終え、男は再び自分の仕事に戻る。しかし女はキーボードに手を当てることなく、やはりキョロキョロとしているだけだった。男の世話焼きな性格がくすぐられる。
「電源落ちたのか?」
「…!……(こくこく)」
「フリーズか?」
「……(フルフル)」
「なんだ、急に落ちたのか。熱は…ないな。特別ハードディスク使ってるわけでもねぇし……ん?」
女は無言で足元――の先を指差す。彼女の向かいでパソコンとにらめっこしている男の足元である。そこに外れたコンセントが転がっているのが見えた。向かいの男は仕事が煮詰まると足をばたばたと動かす癖があるのだ。それによって抜けてしまったようだった。
「おい、足元いいか。こいつのコンセントが抜けたんだ」
男がいうと、向かいの席の男は気付かなかったという表情を浮かべてコンセントを差し込んだ。
「データは保存したのか?」
「……は、……はい…!」
一連の動きはただただ日常でよく見られることだが、女にとっては特別なものだったようだ。目をキラキラと輝かせて男を見上げている。
「あ………あああ……あの…わ、私……空流眠兎【くうるみんと】といいます…」
「(知ってるけど…)ああ、俺は蒼雀【そうじゃく】だ」
一応同僚な為名前は知っていたし相手も知っているはずだがお互い名乗る。(いつもの佇まいから、クール系だと思っていたんだが…)考えを改める必要があるな、と男――蒼雀は考える。そして、やはり世話焼きな性格が彼の全身を襲う。
「空流、さん。よかったら仲良くしないか?」
彼女はクールなんかではない。コミュ障が酷すぎて人と会話が出来なかっただけなのだ…!
「な……ななななか…よく……ですか?……でもあのでも…」
「大丈夫、まずは表出からはじめよう。そうすればきっと治るから」
「(何が!?)あ、あの……はあ……」
「俺相手に自分のこと出してみよう。そうだな、交換日記なんてどうだ?」
「こ……え……!?あ……………はあ…」
かくして、彼らはブログで交換日記を始めることとなる。蒼雀はめげずにブログを続けることはできるのか!眠兎のコミュ障は治るのか!?
乞 う ご 期 待 !
隣合う2つのアパートに住む何人かの交流の記録です。
かわい荘:管理人春風。空流明兎、桃色朝菊、夜空葵がすんでいる。
たつのこほーむ:管理人竜。蒼雀、雪雲、暮黒がすんでいる。
-エムブロ-