もしもし、もしもし
未来の電話です。

ただいま、そうつぶやいたのが4時半で、まだ外は明るく私の影が伸びている。
二丁目の角に捨ててあるコウモリのぬいぐるみがたまに鳴いていて、いとおしいと感じた。

受話器をとる。
もしもし、未来こども相談室ですか。

たまらなく懐かしいものに、一つの歌がある。古い古い、私以外に誰も知らないような歌だ。
私がまだ幼い頃、電子レンジのコマーシャルで流れていた歌。明るく女の子がうたっていて一。それが今、受話器の向こう側で流れている。

夢中で耳を押し付けていると、今度は母のような声で女性が尋ねてくる。
悩み事はなぁんですかぁ。

今私はベッドの上で足を投げ出し、電話機をかかえこみながら夜明けを待っている。
短く切り揃えてしまった髪の毛を鏡ごしに見つめながら。
ふと思い立って窓の外を見てみる。ここは13階だけど、霧が深くぼんやり霞んでいるので、景色はほとんど分からなかった。
ただ電灯の明かりがうっすらと、ぽつぽつ浮き出るように映されているだけ。
受話器を握りなおす。
もしもし、
あなたは誰ですか?

そう聞いてみると、女性はクスクスと笑った。
そして、

こんにちは、未来こども相談室です。

一最初に戻ってしまうのだった。








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