スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

荊2

それまで彼女を立たせていた四肢の、その力が、ストンと足の先から抜け落ちてしまった。
がらがらと人形が倒れるようにそこに崩れ落ちた彼女を見て、わたしは笑った。
「何が楽しいの?」
咎めるのではない。
子供が友達に、仲間に入れて欲しいと乞うような言い方。
楽しいことなんてないんだよ、わたしはそう言って彼女の濡れた頭を撫でた。
敢えて言うなら、その恰好が滑稽だったのだ。
彼女は不思議そうに首を傾げて、その弱々しい腕をわたしの方に伸ばした。
わたしはその手を乱暴に振り払って、代わりに持っていた一本の傘を広げて、彼女の顔だけでも雨から守る。
彼女の表情はそれでわからなくなったが、ただ剥き出しの手と足だけがピクピクと生きているのだと主張するのを、わたしは蔑むように見た。
見て、翼を空に向けて広げた。
そうして羽ばたくわたしを、彼女は傘の裂け目から、いつまでもいつまでも見ていた。
倒れていたい
飛べなくてもいい
きっと走れるだろう
この体は生きられるはず
裸足でも――
続きを読む
前の記事へ 次の記事へ