誠実は無力であって、しかし誠実は楔であって



人と人とは違うから
互いに価値も重さも方法も過程も
異なっているのは道理だけれど

それがわかっていても思うのは
私を粗雑に扱う人のために私は使い潰されなくてはならないのかという気持ちで


互いにやり方が違うのだから軋轢を生まないために距離を取ることは間違っていないはずで
互いに感覚が違うのだから押し付け合いにならないための線引は必要なはずで
互いに変わりゆくものだから知ろうとすることや敬意を持つことは大切なはずで


それらはとても難しいことだけれど、難しいからと軽んじず、理想だからと放り投げず、慣れているからと盲目にならず、考え続けることは無意味だと言われるのだろうか

いつになったら


いつになったら
生きていることを
肯定できるのか

いつになったら
なんの後ろめたさもなく生きていけるのか

いつになったら
もう大丈夫だと言ってもらえるのか

いつになったら
大切なことを大切にできるのか




私のためだけの予定を立てちゃだめなんだろうか
長期休みは全部親と一緒にいないとだめなんだろうか
ゲームしたいな お出かけしたいな
親のしたいことだけのためにお金を使って
もう年なんだからと介護をほのめかされて
色んな要求を飲まないと加害者扱いで親不孝者になって
兄弟は自分の好き勝手の挙げ句借金や他人へ貢いで

私が私のために積み上げたものは
私のために使ってはならないだろうか
そう考えることは親への裏切りなんだろうか
後出しジャンケンに負けた私は
縁を切るしか選択肢をえられないのだろうか
どうして皆私に押し付けるための口は回るのに
知らないふりはできるのに
どうしてどうにかしていくための思考を回そうとしないの


孤独の船出



誰かといた空白が
誰かと出会った足跡が
誰かと語った風の音が

孤独を綺麗に描き出す

空白は月の形をして
足跡は波の形をして
風の音は鯨の声の形をして

たったひとりのためだけの
世界を作り出してくれる

そこに溺れ耽りたいという心は
どうして否定できようか
その孤独の美しさこそ
誰かへの愛だというのに

五稜郭




青年の声がテリオンだったことしか思い出せない


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