2022/8/17 Wed 20:25
明日また会えるのに3

「ふぅ……さっぱりした」

二人で風呂に入って、スッキリとした状態でエアコンの効いた室内に戻る。
この瞬間めちゃくちゃ気持ち良いよな。
髪をわしわしと拭きながら部屋に戻ってきた克は、ドライヤーを引っ張ってきてベッドに座る。

「先輩、髪乾かしますよ!」

「え、いいの?」

「勿論です。ここ座ってください」

手招きする克の足の間に座ると、後ろでドライヤーのスイッチを入れた克が髪に触れてくる。
涼しい室内だからドライヤーもあまり熱く感じない。耳や項に時々触れる克の手が心地良い。
そういえば誰かに髪を乾かしてもらうなんて、美容院以外じゃほとんどないよな。

「先輩の髪サラッサラですね」

ドライヤーの音で聞こえにくいけど、多分そう言ったんだと思う。

「柔らかい方だとは思う」

「ほんとに。俺の髪と全然違いますよー」

「克はなんかこう、わさわさしたくなる髪だ」

「犬ですか、犬っぽいってことですか」

なんて二人で笑い合いながら、交代して髪を乾かして。
時間はいつの間にか日付が変わる前になっていた。

「先輩、泊まっていきますよね?」

「うん」

克の家には、数日分の着替えや歯ブラシを常に置いてあるのでいつでも泊まれる。
克は明日昼まで予定がないと言っていたし、俺も朝の講義が遅めなので問題ない。
こうやって夜遅くまで、それこそ眠るまで一緒にいられる事が本当に嬉しい。
ずっと、毎日こうすることが出来たら……また、昼間に考えていたことを思い出す。

思い切って今、聞いてみようか。

「克」

「なんですか?」

ドライヤーのコードを巻きながら、克は俺を見る。

「俺と、一緒に暮らさないか」

コードを巻き取る手をピタリと止め、克は言葉の意味を一瞬考えたのち、ドライヤーを置いて俺の横に座る。

「同棲ってことですか?」

「うん。世間的にはルームシェアってことになると思うけど」

「俺と先輩が……」

「克が良かったら、どうかと思って。殆ど毎日互いの家を行き来してるし、家が同じなら楽だろ?……それに、バイトで忙しい時も、夜に少しだけ会えたりするし、朝も一緒に起きてご飯食べて……っ、?!」

話している途中で急に抱き締められて、言葉が遮られる。
驚いて目を丸くしていると、耳元で嬉しそうな弾んだ声がした。

「すっっっげー嬉しいです!!」

こっ、声が大きい……!

「先輩!」

ぐい、と体を離した克は心底嬉しそうに高揚した顔で俺を見つめる。

「俺もいつか一緒に暮らしたいって思ってました。……でも、一緒に住むと先輩に甘えてしまいそうな気もしてて、もっと自立してからにしようって、思ってたんです」

「そうなのか?なら、焦ることもないな」

「でも!先輩がそんなに俺との暮らしを考えていてくれたのが嬉しくて。俺だって一分でも長く先輩との時間が欲しかったんで、一緒に暮らしたいです」

「ほ、ほんとに?克のプランがあるなら、それを優先してくれて構わないんだけど」

「俺だけが悩んでたなら、そうするんですけど。先輩も俺と一緒がいいと思ってくれてたんなら話は別です」

話を切り出した俺よりもずっと嬉しそうな姿で、思わず笑いがこみ上げる。

「ふ……っ」

「ええ?!なんで笑うんですか!」

「いや、可愛いなと」

「ええー……」

「じゃあ、ルームシェアする方向で進めようか。両親にも話さないとだし」

「ですね、うちの両親はお好きにどうぞって感じだとは思います。家賃の負担減る上サイ先輩と一緒だって知ったらむしろ喜ぶかも」

「ああ、それは確かに。出費も抑えられるよな」

「なんか楽しくなってきました!」

「うん、物件探しも一緒に行こうな」

「はい!」

先輩と二人暮らしか……うわぁー!!なんて叫びながらベッドに転がる克に笑いながら、俺もその隣に寝転ぶ。

「ベッド、二つ持ってくか大きいの一つにするか悩むな」

「いやもう一つ一択なんですけど!」

絶対先輩と同じベッドがいいです!と意気込む姿が可愛過ぎて、思わず頭をわしゃわしゃ撫でる。

「うわっ、それ犬にする撫で方!」

「気にするな」

もっともっとくしゃくしゃに撫でて、笑い合う。

「別れ際、いつだって、明日また会えるのに寂しくなってた」

「それは俺もですよ」

……なんだ、克もわりと甘えん坊だな?
くすりと笑って擦り寄って、この先の楽しみにドキドキしながら目を閉じた。


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「ルームシェア、かぁ。同棲って言いてぇー!」
「やってることはあんまり変わらないだろ(笑」
「いやでも!恋人なんですからやっぱり同棲でしょ!」
「気持ち的にはそうだな」
「家族とか良には同棲って言います!」
「ふふ…っ、はいはい」





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