マルコとエース (白ひげ)


見えないんだ。
あんたの笑顔がひどく遠い。
今どこで何をしているのかなんて、解る訳もなくて。どこに行けば、なあ、おれは、もうどうしたってあんたには会えないんだろうか。

「…っ、てェ」

ちり、と。胸の奥が痛んでその場にしゃがみ込んだ。苦しい、痛い、よく解らない。ただ、あんたが遠くなっていくのが怖い。嫌で堪らない。なんで傍で笑っていてくれないんだ、なんで傍にいないんだ、なんで、なんで。
駄々をこねる餓鬼みたいに、ただその場で、少しも動かずにおれは泣いた。頬を伝うそれは唇を濡らして、それを舐めたらしょっぱくて。ひどくやる瀬なくなって、消えたくなって、あんたがここにいないことが辛くて、ああ、もう。


「ッ、エース、!」

はたと、顔を上げる。この声を、おれは知っている。立ち上がり必死に辺りを見回して、探す、探す。…ああ、見つけた。

「ま、マル、」
「ったく何してんだよいばかやろう!あんだけ離れるなっつったろい!」

近付いてくるなりおれの頭を思い切り叩いてマルコは言った。その表情は呆れ返っているそれそのもので、おれはずず、と、小さく鼻を鳴らして。

「も、会えねェかと思っ…!」
「あァ!?ただの迷子だろうが、なに大袈裟なこと考えてんだよい殴るぞちくしょう!」
「もう叩いたじゃんかあああああ」
「ッ、!ば、…っかやろう泣くない!ガキかいテメェは!」
「ガキだよ!ガキだから、ガキでいいから、っ…!なあ、それでいいから、」





おれをひとりにしないでください、

(おまえが勝手にフラフラ居なくなったンだろい、なにほざき倒してンだよい蹴るぞこのやろう……っ!)(やだあああああ)(いつまで泣いてんだクソガキ!)(だ、っ、ごめ…ごめんマルコおおお)(うるっせェよいもう解ったから泣き止め!)







うん、ただの迷子だったんです。
100316.





-エムブロ-