食事を済ますと愛犬に餌を与える。
その間に風呂に入り身体を洗い厨房へ立つ。
サラダ用のキャベツと人参の千切りをすると流水にさらす、それから付け合わせのレタスをちぎり、冷水につけるとトマトをさばいて冷蔵庫へ、次に豚ロース肉をさばき筋を切り叩く。
同じく鶏胸もさばく、そして最後に魚をさばいて、最低限の仕込みを終える。
一息つきながらランチメニューを黒板に書く。
注文の少ない料理店
ランチメニュー
Aランチ チキンカツ
Bランチ 鱈の香草ムニエル
Cランチ AランチとBランチの盛合せ
本日のお勧めのパスタ
ほうれん草とベーコンのクリームパスタ
バケット サラダ スープ
Cランチのみ 750円
他、700円
セットでコーヒーはいかが?200円
(全て税込み)
と書いた。
「こんな感じかな・・・・・」
彼は最後の仕込みに入った。
メインのオカズの最後の仕込みを終えるとパスタに添えるスープを作る。
今日はコンソメ風味の野菜スープ、同時にランチの味噌汁を作る。
勿論、味噌汁には朝に豆腐屋から買った豆腐、と玉葱にワカメが入る、ワカメは叔母様が作るモノで毎年頂く絶品のモノた。
豆腐屋から買った豆腐は井戸水と極上の豆で作るので最高にウマイ!
予約しておかないと買えない位だ。
そして玉葱の甘さが豆腐の風味をいっそう引き出す。
「おはようございます」
11時になると近所にある女子大生の「真奈美」と言う可愛い感じのアルバイトが三〜四時間ばかり手伝ってくれる。
結構この娘目当てで来る客も少なくない。
昼のランチタイムになると各30食ばかりだがそれは忙しい。
元は、皿を五枚程持つのは出来るが作りながら出すのは流石に無理が有る。
故にランチタイムには梅柄のお重を使い、副菜二品にメインのオカズに味噌汁を出す様にしている。
お重だと重ねて出す事が出来るしパスタはワンプレートで出せるから楽で早い。
更に予約注文があれば近所の会社にパックのランチを作る、これは悪いが流石に会社の人に取りに来て貰う。
彼の店は木造の地上二階、一階は店舗に厨房にカウンター五席と四人掛けの席が3つあり、二階は殆ど使わないが、和室広間の八人掛けテーブル席が2つ、宴会場的なこじんまりした造りだ。
地下一階は彼の別な本来の仕事場で中庭では根菜を植え、それをはさんで母と娘の犬小屋があり住む家は隣接している。
そこでは犬を放し飼いにしている。
犬は野菜畑を一切荒らさない、教えた訳でもない。
物干し台には葉物野菜を屋根の上と一緒にプランターで栽培していた。
時々、犬を洗ってやると物干しに上り全身を舐めて身体を乾かす。
意味無いだろうと、ふと思うが仕方無いと諦める。
夏場になると犬は囲いから穴を掘り脱走しては近所の冷房の利いた床屋に行き店の入り口の硝子を引っ掻いて入れろとねだる。
床屋の夫婦も判っていて中に入れてくれ、犬は図々しく一番冷房の風が当たる場所に陣取り昼寝をする。
お客が来ても匂いを嗅ぐだけで何もしない。
行くと何時も魚肉ソーセージをもらうらしい。
天気が良いと中庭の犬を店の前に出して二匹揃い看板犬をさせる事もある。
今日も天気が良く爽やかだ、看板犬が日向ぼっこをしながら寝ている。
(2015/02/15(月) 2158時メール投稿)