17-d SS部屋

ここは 17-d のSS置場です  
 ■ 気になって仕方ない    2021/4/7 09:39
ぐだ(男)×アスクレピオス
アキハバラ・エクスプロージョン!ネタ


【気になって仕方ない】


住んでいた街と似ているようで違う秋葉原で起きた異変。
それを解決すべく奔走し、ついに俺たちはこの異変を起こした黒幕がいる秋葉原タワー会館の最上階にたどり着いたのだった。
「――――……!!」
タワーの最上階でまず目に飛び込んできたのはそれは『彫像』だった。
この街で出会った協力者であるガラテアがもう一人いたとか、そんなことよりなぜここにアスクレピオスの彫像があるのかの方が気になって半分話が入ってこない。
真面目な話が進んでいるが、誰もあれが気にならないことにちょっと衝撃を受けた。
まぁアスクレピオスが美しいから形にして残したくなるのはわかる、即握手だ、キミとは仲良くなれそう、一晩中語り合える気がする。
その他何かもあるけど、そこは省略。
どこか話の間に、それはなに? と訊く間がないかと探すものの、口を挟める空気じゃない。
俺の主張を言える瞬間になるまで空気を窺いながら、ずっと適当に「そうだね」「きみの言う通りだ」と雑に返しているうちに、訊く機会を失ったままなんやかんやで異変は聖杯回収とともに終わってしまった。
この像を作った理由を聞けず仕舞いなのが心残りだが仕方ない。
秋葉ねろちゃんともお別れし、これで全てが終わったことを確認してから俺はやっと気になって仕方なかった像に近付く。
「先輩? どうし――」
「これ持って帰るわ」
『……さっきから落ち着きがないな、と思ってたけどそういうことだったんだね』
通信の向こう側でダヴィンチちゃんが呆れていた。
「気にならないみんなの方がおかしい!!!」
「……キミって普段は普通なのにあの医者のサーヴァントが関わると途端に残念になるよね……」
エリセは頭を押さえ、溜め息をつきながら嘆くように呟いた。
そんなこと言われたってこれは病だ、そういうなれば『恋の病』、こればっかりは自分でもどうしようもないのだ。


‐ ‐ ‐


カルデア マイルームにて
何時間にも説得の末、あの像をカルデアに持って帰ることに俺は成功した。
しかし、みんなはフィギュアを持って帰ることができて、俺が彫像を持って帰ることを許されないのはおかしい、というか、俺が持ち帰れないならマスター権限でみんな買ったものを置いていかせると宣言。
これが最後の決め手だった。
実際には、相手が根負けしただけだが。
それはともかく。
部屋のどこにいてもアスクレピオスの姿が見えるのはいい、とてもいい。
俺は手を像の頬に添えてみた。
……冷たい、当たり前か。
もう少し距離を詰めて、顔を近付けてみる。
「本当に、よくできてるなぁ」
俺が髪の毛の先を指でなぞって、悦に浸っていたとき、部屋の扉が開いた。
「マスター、帰ったのなら検査を受けろと何度言えば……、なんだこれは」
これはアスクレピオスが俺の部屋に入って早々、嫌悪を滲ませる。
もちろん向けられる視線の先にはアスクレピオスの彫像。
真っ直ぐとその像の方へと向かってきて、触れるくらいの距離まで来たかと思うと拳を振り上げ、たったの一撃で粉砕した。
「ぎゃああああああああああああああああ!!!! ちょ、おま……!! な、ななな、なに、して……!!」
ゆっくりとこちらに振り向くアスクレピオス。
掲げられた拳は内側から血に濡れて白い袖を赤く滲ませ、それを見せつけるようにもみえて、それはまるで、次はお前の番だ、と伝えているように俺には見えた。
「うるさい、壊れただけで叫ぶな。それより――」
俺のものを壊しといて、それよりで流さないで欲しい。
「……お前は、本物よりこんなモノの方がいいのか」
「――は?」
予想していた言葉とはかなりかけ離れていたために疑問にしかならなかった思いがそのまま声に出た。
え? いま、なんて?
殺意を隠さないまま、ものすごくかわいいやきもちな言葉が聞こえた気がする。
「マスター、どうなんだ?」
俺の両肩を掴んで、ずい、と問い詰めるかのように目と鼻の先にまで寄ってくる。
普段はこの距離まで近付かれることは少ないけど、こうやってまじまじと顔を観察するとやはり『美しい』と思ってしまう、そのたびに俺は何度も惚れ直す。
この容姿端麗の美しく、そして中身もかわいいとか、存在が最強だと言わざるを得ない。
衝動のままについ思いっきり抱き締めてしまった。
そしてその勢いのまま、告白する。
「――アスクレピオス! 好きだ!」
アスクレピオスは突然の俺の行動にもがくが、抵抗しても離してくれないとわかったのか抵抗が止む。
「……僕も、マスターのことは好きだが」
みるみるうちに殺意は引っ込んでそう言ってから、俺の首筋に顔をうずめながらさらにぼそぼそと呟く。
「抱き締めるのも、キスするのも僕だけにしろ」
「……ん?」
さっきから俺は話についていけてない気がする。
それかアスクレピオスの想像力が豊かすぎるだけなのか、いや、あんまりそういう想像だけで責めることはないといっていい。
だからこういうのには何かしら根拠があるんだろう。
心当たりがないので、黙って話の続きを待ってみる。
「さっき! しようとしてただろ!」
そう言われてやっとわかった。
さっきもっと近くで見るために顔を近付けていたのを勘違いしたらしい。
だが、それを説明したところで勘違いさせるような行動したことには変わりはない。
「あー、……ごめん。もうしない」
「ん。わかったならいい」
「手、大丈夫?」
「一度霊体化すれば治る」
すりすりと甘えるように寄ってくるのを受け入れながら、それを頭を撫でてやる。
アスクレピオスの機嫌が直ったのはいい。
けど、この壊れた彫像をどうするかを俺はこれから考えなければならないのであった。



あの像欲しい

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