ブルーブラック
top bkm clap

2012.4.28 14:21 [Sat]
突発








「ここにいたって貴女は成仏出来ない」

凛とした声が響く。
真っ直ぐに彼女を見据えるウルの瞳には、恐怖も偽りもない。
その心まで射ぬくような瞳で、ウルは彼女に語りかけるのだ。
たとえ既に死んでいて、この世のものではなくなっていても。


「このままでは怨霊になってしまう。だからっ」
「ウル、もういいだろう。彼女は無理だ。消そう」
「リオンっ!てめーはなんでいつもそうなんだよ」


廃墟と化したビルの屋上。
数ヵ月前に起きた飛び降り自殺。
以降出回る怪談話。


“啜り泣く音”
“屋上にあらわれる霊”
“殺人”


「ギィアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


その声にならない唸りは、まるで悲しい訴えのようで。


「ふん。ほら見ろグレイ、堕ちたぞ」
「クソッ、どーすんだよウル」
「……仕方ないな」


そして。





















その屋上には再び静寂が訪れる。
先程までの陰湿な雰囲気も禍々しさもない。


「救ってあげたかった」





01.明日が見えない
(真実はいつだって暗闇の中)

















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