ひでさんといつものように
夕飯を食べながら、
話題は「結婚式」のことに。

昨年9月に結婚したわたしたちは、
このご時世なので
結婚式を挙げていない。
あと、それ以外にも
いくつか理由があるため
おそらくこの先も
挙げることはないと思う。
元々ふたりとも
式を挙げることにこだわりはなかった。

でも、わたしはやっぱり女なので
心のどこかで
0.1gくらいの気持ちで
「やってみたかった」と
思っていたのかもしれない。
それが声に乗ってしまっていたのだと思う。

「結婚式か〜」

そう何気なく呟いたわたしを
ひでさんはじっと見つめ
大真面目な顔をして
「次、生まれ変わったら挙げような」
と言った。

生まれ変わったら。

ひでさんの口から
あんまり聞き慣れない言葉が出たので
きょとんとしてしまった。

「次もカノコを妻にするからさ〜」

わたしは仏教の家に生まれたけど、
輪廻転生という思想は知っているけど、
生まれ変わりとか
信じている方ではない。

ひでさんだって、
理系出身ということもあり
ふだん非科学的なことは
決して言わない。

そんな彼が、わたしと
「生まれ変わっても一緒にいる」
そんなイメージを
心に思い描いているだなんて
夢にも思ったことがなかった。

いつもたくさん喧嘩する。
わたしに対する不満だって
ひでさんはあんまり言わないけれど
本当は山ほどあるのでしょう。
自分で言うのもむなしいけど
わたしは完璧な妻ではない。

それでも彼は当たり前のように
「次」を願ってくれるんだな。
夫婦としての人生は
まだ始まったばかりなのにね。

ご飯を終えて
トイレに入ってから
ちょっと泣いてしまった。
ふだん冗談でも
来世の話なんかしない彼の
心からの言葉が
あんまり嬉しかったから。

ありがとう。
ありがとう。
この先もわたしたちの間には
いろんなことがあると思うけど
あなたにそう言ってもらえたこと
ずっと忘れないよ。

話題:ありがとう